第3回(2000.12.24更新)

永遠のヒーロー、ウルトラマンのルーツを探せ!
----ウルトラマンの元ネタ考察----

日本では、まず知らない人はいないであろう永遠のヒーロー、ウルトラマン
ウルトラマンの元ネタは何か?と言う訳で、今回のコラムはウルトラマンのルーツに迫る。
何がウルトラマンを生むきっかけになったのか?…その答えは、ウルトラマン以前のヒーロー、怪獣物といった日本特撮史を探れば、わかる…のです。

まず、テレビの世界での特撮ヒーロー物と言えば、アメリカの「スーパーマン」。国内で放映されたのが1956年11月(アメリカでの放送開始は1953年)で、あっという間に人気となり、その影響で国内でも1958年4月から始まった「月光仮面」、続いて「遊星王子」「ナショナル・キッド」などといった等身大ヒーロー物が製作され人気を呼んだ。

怪獣映画では、1954年11月「ゴジラ」、1955年4月「ゴジラの逆襲」、1956年12月「空の大怪獣ラドン」、1961年7月「モスラ」、1962年8月「キングコング対ゴジラ」、1964年4月「モスラ対ゴジラ」が製作される。そして同年12月の「三大怪獣 地球最大の決戦」以降、1965年12月「怪獣大戦争」、1966年12月「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」と、明るく擬人化を強めていったゴジラ映画が公開。そのゴジラ映画公開の狭間、1965年8月「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」、1966年7月「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」と続く怪奇色の強い2本の怪獣映画が公開される。

再びテレビの世界に戻って、1963年1月「鉄腕アトム」、同年10月「鉄人28号」、同年11月「エイトマン」といったロボットアニメ物が放送。1964年8月「ビッグX」、1965年1月「スーパージェッター」、同年5月「宇宙エース」「宇宙少年ソラン」と相次いでSFアニメが製作。そして実写特撮物として1966年1月から円谷プロ制作の「ウルトラQ」がスタート。さらに同年7月「マグマ大使」と続き、いよいよ7月17日より平均視聴率36%超(最高42.8%)の高視聴率を誇る「ウルトラマン」がスタートする事となる。

→「ウルトラマン」予告編画像はこちら

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やはりここで特筆すべきは、1964年8月放送開始の手塚治虫原作「ビッグX」であろう。ウルトラマンとの類似性はすでにマニアの間で語られているが、胸ポケットのペンシル型変身器具を注射すると巨大化するヒーローであり、ベータ・カプセル(フラッシュ・ビーム)の元ネタである(…といわれている)。

さて、そのウルトラマン自体の企画は、というと1966年1月「ウルトラQ」放送の前年、1965年11月に「科学特捜隊ベムラー」というウルトラマンの元企画が、日活「大巨獣ガッパ」や天狗に似ているベムラーという名前のウルトラマン的ヒーローのデザインスケッチとともに残されている。
そして1966年初めにはベムラーからレッドマン、さらにはウルトラマンへと変更決定され、いよいよ撮影が開始されるに至る。

それではその1965年11月の「科学特捜隊ベムラー」という、ウルトラマンの元企画が作られた頃の実写特撮作品でウルトラマンのルーツといえそうな作品といえば…。
そう、1965年8月公開の「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」である。人間型の怪物と獰猛な四つ足動物の戦い!どうしてもモタモタしてしまう着ぐるみ怪獣同士の戦いと違い、人間型だからできるスピーディな動き、人間型だからより感情移入しやすいなどの、それまでの怪獣映画の常識を破る、新たな方向性に溢れた作品である。

人間や動物を喰いちらす獰猛なバラゴン。餌を求めて山村に近付こうとするのを食い止め、森に誘い込もうとするフランケンシュタイン。待ち伏せをかけ、火のついた松明で威嚇するフランケンシュタインの人間的な攻撃と、獲物に飛びつき捕獲しようとするジャンプ攻撃、感情的に熱線を吐くバラゴンの動物的な戦いぶりは、まさに人間対獣の戦いで、それまでの怪獣映画にはなかったパターンだ。これぞまさに元祖ウルトラマン!

この映画のフランケンシュタインの設定は、メアリー・シェリーが1818年に創りだしたフランケンシュタインの怪物とは違い、第2次大戦中、ナチスドイツが弾に撃たれても絶対死なない不死身の兵隊を作る為に生み出したクローン人間という設定である。
ここでまたもや、ナチスドイツが開発した鋼鉄の体を持つ不死身の兵隊を作る薬品名である「ビッグX」との類似性があてはまる。
「ウルトラマン」は「ビッグX」の変身過程を引用しつつ、「フランケンシュタイン対地底怪獣」を元ネタとして、さらに独自の魅力的なキャラクターを築いていったと推測する。

「フランケンシュタイン対地底怪獣」の次作「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」では、生身の人間ではない人間型ぬいぐるみの巨人が東宝怪獣映画に初登場する事となるが、この「サンダ対ガイラ」が公開されたのが、1966年7月31日。そして「ウルトラマン」が放映されたのが7月17日と、ほとんど同時期であったというのも単なる偶然ではないはず。
「フランケンシュタイン対地底怪獣」で人間型怪物の新たな可能性に手ごたえをつかんだスタッフが、かたや「ウルトラマン」という人間型巨大ヒーロー、かたや「サンダ対ガイラ」という人間型怪獣へと、そのイマジネーションを広げていった結果なのです。

という訳で、「ウルトラマン」誕生を語る上で欠かす事のできない作品というのは、手塚治虫の「ビッグX」、東宝特撮スタッフと円谷英二の「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」の姉妹編という3本の作品であり、これらこそがまさに「ウルトラマン」のルーツともいえる作品なのである。

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  ■鑑賞のポイントとツッコミ所!

「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」1965年8月8日公開 →ジャケットギャラリーへ

●人間よりひとまわり大きい着ぐるみ怪獣と、生身の人間型怪物の戦いではどうしても重量感と見た目のひ弱さで無理を感じてしまうのでは…と当時の製作スタッフが撮影時に懸念したと資料にはあるが、その懸念を吹き飛ばすフランケンシュタイン演ずる古畑弘二の熱演と特撮スタッフの技術は必見!

●フランケンシュタインに殺されたバラゴンは、その後「ウルトラQ」のパゴス、ネロンガ、マグラー、ガボラへと改造される。そしてアトラクション用のネロンガとなり、さらに再びバラゴンに戻って「怪獣総進撃」に登場するという凄すぎるキャリアを持つ。さすが東宝怪獣史上でも常に上位ランクの人気怪獣!

●巨大化するフランケンシュタイン!それにつれて着ている服までもが大きくなるのは何故だ?まるで、オーダーメードであつらえているようだ…さらにクライマックスのバラゴンとの戦いでは、毛皮のような衣類を身に着けている。こんな大きな毛皮を持っている動物はそういるもんじゃない。この毛皮をハンティングするためのフランケンシュタインの壮絶な戦いを描いた映画も実はある(…わけない)。※初期段階では、「フランケンシュタイン対ガス人間」「フランケンシュタイン対ゴジラ」という企画もあった。

●フランケンシュタインとバラゴンの両方の出現に関わり、ラストの壮絶な戦いまでのそれぞれの細かなエピソードを結びつける重要な橋渡し役とも言える河井を演ずる土屋嘉男の渋くおさえた演技が光る。さすが黒澤家に住み込んで演技指導を受けただけの事はある。名作「七人の侍」から「ガス人間第1号」などの特撮物まで幅広い演技が素晴らしい…。

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「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」1966年7月31日公開 →ジャケットギャラリーへ

●映画前半はガイラの見せ場の連続!冒頭の大蛸との戦いから富士の裾野でのガイラ撃滅戦まで息つくひまのない東宝特撮史上屈指の名場面の連続。ガイラ撃滅L作戦はいつ見ても燃える!

●ガイラ演ずるは中島春雄(初代ゴジラ俳優)、電流攻撃を受け、のたうつ姿はさすがうまい。ガイラを助けにきたサンダの演技も泣かせる…。人間型ぬいぐるみだからできる迫真の演技!人間型だから感情移入しやすいという利点も生きている。

●羽田空港で捕まえた事務員の女性を食べた後、服を吐き出すガイラ!海外版は吐き出した服がそのまま写るが、国内版はカット! このシークエンスはそのまま平成版「ガメラ対ギャオス」のギャオスが人間を食べるシーンに活かされている。

●クライマックス、破壊されるビル郡の中が空洞というのも、緻密だが大胆な円谷特撮の魅力(?)。初ゴジ、キンゴジ、モスゴジとゴジラの顔がコロコロ変わるのを心配した当時のスタッフが、円谷監督に、毎回こんなに顔が変わって大丈夫でしょうか?と聞いた答えが、「な〜に、わかりゃしないよ」だったらしい。なんとも無責任っぽい発言だが細部よりも全体のトーンをいかに大事にしたかがわかるコメントである。

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