第29回(2007.7.21更新)

松本清張 傑作サスペンス「黒い画集」シリーズ

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」
「黒い画集 ある遭難」
「黒い画集 第二話 寒流」

いずれも松本清張原作「黒い画集」に収録されている短編小説を映画化したもの。
平穏だった日常が突然こわれていく。 いつどこで、どんな危険があるのか、誰にもわからない…。 松本清張 傑作サスペンス「黒い画集」シリーズ。

■「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(1960年3月13日公開)

中間管理職の典型。小林桂樹演じるサラリーマンは、部下との愛人関係が公になる事をおそれるあまりウソをつく。やがてそのウソは、無実の男を殺人事件の犯人にしてしまうのだが…。
誰の心にもある、わが身可愛さからの保身、フッとした心の隙間にあらわれたそんな悪心から、徐々に追いつめられていく男。こんなはずではなかったという、心の叫びが聞こえる悲痛なエンディングまで、片時たりとも画面から目を離す事ができなかった。

自ら蒔いた種、自業自得といってしまえばそれまでだが、後ろめたい事のひとつやふたつ、人間なら誰でもあるはず。他人事とは思えないこわさだ。

監督は堀川弘通。脚本はさすがの橋本忍。

■「黒い画集 ある遭難」(1961年6月17日公開)※未ビデオ化作品

鹿島槍で起こった、ある遭難事故で一人の男が死亡する。 登山のベテランである江田(伊藤久哉)がついていながら、何故弟は死んでしまったのか?ただ独りその遭難事故を不審に思った、死んだ男岩瀬(児玉清)の姉、真佐子(香川京子)は、登山に詳しい従兄弟、槙田(土屋嘉男)に相談を持ちかける。
そして、疑惑の男、江田に接近する槙田だが、その疑惑が確証に変わった時、予期しない結末が二人を待ち受けていた…。

映画後半、しんしんとした雪山登山での槙田と江田の心理戦。
淡々とした口調ながらも徐々に確信に迫る槙田。 その槙田を冷静にはぐらかす江田。
緊迫感溢れる二人のやりとりは、見応え充分。

監督は「若大将」シリーズの杉江敏夫。脚本は「直撃!地獄拳」の石井輝男監督。松本清張の原作の良さを抜きにしてもいい仕事ぶりだ。

■「黒い画集 第二話 寒流」(1961年11月12日公開)※未ビデオ化作品

愛人を寝取られた上司への嫉妬心から、エリートコースの階段を踏みはずしていく男、沖野(池部良)。
サラリーマン社会にどっぷりと漬かっていた彼にとって、サラリーマンとしての忠誠心がほころぶ時、それは身の破滅を意味する事に他ならないのだったが…。

サラリーマンの出世コースから外され、寒流に流されてしまった沖野は、上司桑山(平田昭彦)に復讐を果たそうとするが…。

「悪い奴ほどよく眠る」を彷彿させる展開だが、寒流に流されるべくして流される男、沖野と、父親の復讐のために執念をみせる西。そこが、大きく違う。

監督は鈴木英夫。脚本は若尾徳平。

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黒澤映画、若大将シリーズ、社長シリーズといった、東宝メジャー作品でおなじみの顔ぶれが多数出演しているのも、目に楽しい。
サスペンス&ミステリー映画ファンなら必見のシリーズだ。

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